
東京2段ベッドライフ|なにげなWeekly
オルビス社員のひなたと靴下柄の相棒猫・くつしたさんの凸と凹な毎日。うっかり!が発生してちょっと残念な日だって角度を変えれば愛おしくなる。そんな瞬間を捉えた、ほぼノンフィクションなお話を、週替わりでお送りします。
プロフィール紹介
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ひなた(左)
オルビス社員歴いつの間にか5年目。くつしたさん曰く、「なんでも器用にこなせるのに、時々とんでもなく不器用な動きを見せる不思議なニンゲン。」家に着くとまっさきに靴下を脱いでしまう。くつしたさん(右)
靴下柄がチャームポイントなひなたの相棒猫。御年5歳。趣味はひなたの見守りとニンゲン観察。時折、達観したそぶりと鋭い考察を見せる。ひなたが脱ぎっぱなしにした靴下をときどき片づけてあげる。
東京二段ベッドライフ
こんにちは。ひなたです。
大学進学とともに上京したわたしの憧れの東京ライフは、2段ベッドからはじまりました。
いわゆる「東京」のイメージである高層ビル群からは程遠い、森に囲まれた大学への進学が決まった○年前…。いよいよ憧れの一人暮らし!と思いきや、経済面・安全面の観点から大学の敷地内(!)にある寮に入ることになりました。祖母には「東京は怖い人がいるから、お金は数か所に分けて持っていきなさい!」とかなんとか散々脅され、たどり着いたその寮は怖い人よりもホコリと虫に怯えてしまう築80年ほどの建物でした。
昔からある寮だと聞いてはいたものの、想像をはるかに超えるアンティーク感に慄きながら部屋へ行くと、そこには机と小さなクローゼットが2つずつ、そして2段ベッドがどうにか入る小さな空間。わたしの部屋が寮内で一番狭い部屋だったことは後から分かったのですが、ルームメイトととにかく気が合ったことと、窓からの緑と風が気持ち良かったことだけを覚えておこうと思うぐらい、これからの生活に不安が募ったものです。
しかし、住めば都とはよく言ったもので、地方出身者しか入れない寮には全国各地から東京に憧れ、そして不安を抱えた仲間たちが集まっており、アッという間にチームのような団結感が生まれました。
共同キッチンで地元から送られてきた食材で料理をしたり、食堂で1つしかないテレビを取り合ったり、寝坊して遅刻しそうになったら起こしに行ったり…各地の方言(留学生もいたので外国語も)が飛び交い、うつり、謎のミックス言語になりかけながら過ごした4年間。
わたしはずっと2段ベッドの上を使っていたのですが、古くて寝返りをうつたびに軋みまくるそれを「眠りが深すぎてまったく気にならない」と言い切ってくれたルームメイト。今では素敵なお母さんです。おおらかな彼女とでなければ成立しなかった寮生活でした。ありがとう。
イラスト/タソカレー
編集/間野加菜代(Cumu)
文/神谷日向子
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